- CDレビュー MALICE MIZER -








活動停止から数年経て、突然の発売となったシングルコレクション。
コロムビア所属時のシングル5枚の収録曲と、ヴェルエールの無声映画風PVのDVDを、オルゴールボックスに収録した受注生産アイテム。

外装を開けると、ヴェルエールのPVに登場した書物を模ったオルゴールボックスが現れます。
開くと、ヴェルエールのイントロのフレーズを奏で出し、中にはCDとDVDが収納されています。

マリスのシングルは全て持っているのですが、このデザインに惹かれて買ってしまいました(笑)。

デザインだけでなく、肝心の収録曲の方も、A面はアルバム収録版とはアレンジが違うものもありますし、B面曲は全てアルバム未収録なので、それらの面でも充分価値はありますね(後日、オルゴールボックス無しのバージョンも発売されたみたいです)。

ヴェルエールは主にイントロや間奏のオルゴール部分、大サビのコーラスの有無くらいですが、アルバム発売後にシングルカットされた、ILLUMINATIとLe cielは、ほぼ別物とも言えるアレンジになっています。
ILLUMINATIでは、シンセ系のデジタルな音色が増え、Kamiがデジタルドラムを叩き、原曲のノイズ分が減ったことで、アルバム版よりも無機質でスペーシーな感じになっています。
Le cielの方は、まるで霧の海を彷徨うような、輪郭のぼやけたメロから、突き抜けるような力強いサビへ展開する、後のGacktソロの楽曲のような、メリハリの効いたアレンジになっています。
どちらも、アルバム版とは甲乙着け難いものなので、聴く価値はありますよ。(*´ー`)

B面曲は、Koziのボイスとデジタルなリズムで構成された「COLOR ME BLOOD RED」、インディーズ時代の曲の再レコ版「N.p.s N.g.s」、Gacktの緩やかな歌が原曲とは違う色気を醸し出す「au revoir -Bossa-」、アコーディオン奏者、coba氏とのコラボを実現した「月下の夜想曲 -de I'mage-」等、こちらは通好みな曲が多いですね(笑)。


オルゴール無しの廉価版が出た今、どちらかというとコレクターアイテム的なイメージが強いですが、マリスファンなら一家に一つ、いかがでしょうか(爆)。
限定盤となっていますが、結構中古屋で見かけることも多く、4000円弱で手に入りますよ(定価は8000円)。


☆お気に入り曲

ヴェル・エール 〜空白の瞬間の中へ〜
ILLUMINATI P-Type
Le ciel 〜空白の彼方へ〜

La Collection des Singles
-L'edition Limitee-
2008/10/29作成
総評:★★★★





ヴォーカル不在でもバンドの健在を証明した、原点回帰作。

MALICE MIZERの、通算三枚目になるフルアルバムで、Gackt脱退後にリリースされた、唯一のアルバムでもあります。
バンドの原点とも言える、ゴシック、クラシック的要素が強調され、バンドサウンドを極力廃することで、アルバムの方向性をより明確にした、一種のコンセプトアルバムと言えるでしょう。
多種多様な音楽性を、破綻させずに融合させた前作「merveilles」と、ひとつの方向性を徹底的に突き詰めた今作は、偶然か意図か、対極の方向性を持っていますね。

メンバーはMana、Kozi、Yu〜kiの三人で、後に三代目ヴォーカルとなるKlahaは、このアルバムではまだゲスト扱いとなっています。

01、10はインスト、03、08は男女混声合唱、02、05は、Klahaと女性コーラス、04、06、09はKlaha、07は女性のみが、歌を担当しています。
03と10には、加工された楽器隊の声も入っています。

チャーチオルガンや弦楽器をメインに添えた曲が多く、ゴシックやクラシック音楽のような方向性を見せる反面、アンビエント的な07「地下水脈の迷路」や、インダストリアルばりの打ち込みやギターの登場する08「破誡の果て」等もあり、完全に一辺倒という訳ではないのですが、こういう一つのテーマを突き詰めたアルバムに慣れてない方は、ちょっと退屈に感じてしまうかもしれません。

Gackt在籍時に多く見られた、マリスの大きな方向性のひとつである、フレンチポップ的な曲は完全に排除されているので、余計に敷居が高くなっているとも言えるでしょう。

私は、ちょうどこの頃にファンになった者なので、ヴォーカルがいなくてもバンドが健在と証明した10「再会の血と薔薇」。
ヴォーカリストを雇わず、聖歌隊を使った壮大なゴシック+インダストリアルワールドを展開した03「虚無の中での遊戯」。
そして、マリス王道の絡み合うツインギターと、謎のヴォーカリストが登場した「白い肌に狂う愛と哀しみの輪舞」。

・・・と、当時のエピソードや思い出を沢山持っているので、どうしてもこのアルバムの評価は、少々贔屓気味になってしまいます・・・(^^;

逆に、これ以降、Klaha加入後や、Moi dix Moisからファンになった方が、このアルバムをどう思うかというのは興味深いですね。


☆お気に入り曲

聖なる刻、永遠の祈り
虚無の中での遊戯
再会の血と薔薇

薔薇の聖堂
2007/02/27作成
2008/10/29加筆修正
総評:★★★★





メジャーシーンで唯一のリリースになってしまった、MALICE MIZERの二枚目のフルアルバム。
世間を騒がせた「月下の夜想曲」や、自分がこのバンドを知るきっかけになった「ILLUMINATI」もこのアルバムに収録されていて、色々思い出深いアルバムです。

メジャー初のアルバムであると同時に、究極のコンセプトアルバムとも言えますね。
古今東西、現実世界から精神世界まで、様々な世界観を音とビジュアルで表現しています。
中世ヨーロッパ風の、マリス的様式美を表現した、02、06や、それにタンゴのリズムを取り入れた御伽噺風の11、バンド結成時からのアイデンティティーである、絡み合うツインギタースタイルの究極形03等は、世間一般で知られているマリスミゼルのイメージそのものですね。

そして、そんな先入観とは別の顔を見せる、Gackt加入以降から姿を見せ初めてポップナンバーも健在。
05、07あたりがそれにあたり、08では、ユーロビートのようなダンスナンバーまでも披露。
04と09は、人間の誰もが持つ暗黒面を表現した、インダストリアル的要素を取り込んだハードな曲で、デジタルな打ち込みフレーズも、このバンドの強力な武器だということがわかります。

10は、唯一のGackt作曲ナンバーで、後にリアレンジされ、シングルカットされました。

多種多様な顔を見せるこのアルバムは、のちにリリースされる「薔薇の聖堂」と対極を成すが、それと同時に、対照的なコンセプトを徹底的に掘り下げた、二大モンスターアルバムとも言えます。

キャッチーな曲が多いので、ビジュアルが受け付けない、という方でも、安心して聴けると思います(ILLUMINATIやS-CONSIOUSはキツイかもだけど(^^;)。
なので、ソロのGacktが好きな方に、是非お勧めしたいですね。
ビジュアル面も好きになれる方なら、merveillesを引っ提げたツアーのライブDVD「merveilles 〜Le’space〜」も観てみましょう。(*´Д`)

☆お気に入り曲

Shunikiss 〜二度目の哀悼〜
ヴェル・エール 〜空白の瞬間の中へ〜
Le ciel 〜空白の彼方へ〜

merveilles
2006/01/18作成
2008/10/29加筆修正
総評:★★★★☆







Voyage sans retour

2016/08/10作成

★★★★


2ndアルバムであり、第2期MALICE MIZER初のアルバム。

先行シングルで示されていた、バンドサウンドを廃した楽曲がアルバムの大半を占めており、当時では異例過ぎたそのサウンドコンセプトが明確に現れだしたアルバムでもあります。
打ち込みのストリングスやパーカッションの中に生のヴァイオリンを取り入れ、ミュージカルのようなサウンドの「Transylvania」から始まり、「premier amour」や「偽りのmusette」では、ポップでありながらどこか物哀しい、マリスらしい二面性も感じさせます。
ツインリードギターを全面に押し出した、第1期のサウンドコンセプトを受け継いだ楽曲も健在で、後のヴェルエールへ繋がる「追憶の破片」や、1期の頃から存在していた「死の舞踏」がそれにあたります。
本作で変化球にあたるのは、喜怒哀楽の喜をとことん突き詰めたような、とびきりポップな「Madrigal」と、演劇路線とはまた別の、インダストリアル路線へ接近した「N.p.s N.g.s」。
N.p.s N.g.sはその後のMALICE MIZERのダークサイドを代表する曲となり、メジャーデビュー後に、シングルのカップリング曲としてリメイクもされました。

総括すると、まさに新生MALICE MIZERを完全表現した一枚、と言えるアルバムで、メジャーデビュー後にも続く、ツインリードのバンドサウンド、演劇を取り入れたサウンド、明るい曲調のポップス、そして破壊的なインダストリアルという、マリスの武器となるサウンドが揃っています。
インディーズ音源というのもあり、音質があまりよくないのが玉に瑕ですが、それはそれでマリスらしいアンティークさも感じさせる…というのは流石に贔屓目かしら(笑)。


・お気に入りの曲
Transylvania
偽りのmusette
Madrigal





インディーズ最初のCDで、唯一の第一期メンバーによる音源。

初代ボーカルのTetsuは、以後のマリスやMoi dix Moisのボーカルとは明らかに毛色が違い、このCDを聴いて戸惑ったファンも多いのではないでしょうか(私もそうでした)。
Tetsuは、とても好き嫌いの分かれる声の持ち主ですが、高音域のパワフルさは歴代ボーカル随一で、バンドサウンドが主体だった楽曲と相性がよく、第一期が最も「ロック」な理由の一つとなっています。

収録曲は、バンドサウンド中心ですが、ギターはクリーントーン中心で、ゴシックロックのような暗さはなく、ヨーロピアンな、華やかさを放つ曲が多く、ここら辺は、第二期にも活かされていますね。
「午後のささやき」では、Tetsuのガットギターも登場。
それらと対象的に、以後のマリスの象徴となる、絡み合うツインギターも既に確立していて、変拍子満載のプログレッシブロック的な「バロック」は、後の楽曲に負けないくらいのインパクトがあります。

バンド初のアルバムなので、ギターの音が細く、全体的に頼りなさも見えますが、楽曲のクオリティの高さは、とても処女作とは思えません。

冒頭で記した通り、マリス初心者には向きませんので、二〜三期の曲を利き込んだ方や、GacktやKlahaではなく、「マリスというバンド」が好きな方にオススメします。

☆お気に入り曲

記憶と空
Seraph
バロック

memoire DX
2009/05/15作成
総評:★★★★





Back



レンタルCGI ブログパーツ ブログパーツ ブログパーツ