先行シングルである「New World」が打ち込みを取り入れた軽快なロックサウンドでしたが、本作はそこからは到底想像できないダークで密教のような不気味な雰囲気の「cum uh sol nu -フラスコの別種-」から幕を開けます。
キラメキの中で…とMr.Darkness & Mrs.Moonlightを足した感じ…といえば、どれだけダークな幕開けかわかると思いますw
ノイズ満載の「PINOA ICCHIO -躍るアトム-」や、「THE SEASIDE STORY」、アコギを使ったダークなミドルチューン「El Dorado」「曼珠沙華 manjusaka」等、BUCK-TICK得意のサウンドを主軸にしてはいるのですが、2007年頃から多くなってきた、Oh!Yeah!みたいなコールアンドレスポンスの入った曲が徹底的に廃されており、激しい曲もバラードもとにかく淡々としています。
それもあって、ここ10年近くにリリースされたアルバムでは屈指のダークさを誇り、ダークなBUCK-TICKが帰ってきた!という印象を受けました。
前作の「無題」と並ぶ、櫻井さんの表現力が遺憾無く発揮される「愛の葬列」でアルバムを締めくくるという構想もあったようですが、「New World」が最後に配置され、ダーク一辺倒だったアルバムの最後に唯一、ポジティブで軽快な曲が入ったことで、これで終わるのではなく、始まりを感じさせる終わり方にしたいという流れになりました。
ある意味浮いてるとも言えて、どことなくボーナストラックのような印象も受けますね…TABOOのJUST ONE MORE KISSみたいな(笑)。
総評として、どれもが入門向けとも言えるくらいポップでキャッチーだった、2007年以降のアルバムでは最も異質な作風で、久々に初心者にはオススメできないアルバムが誕生してしまった、と言った感じです(笑)。
ダークではありながら、Six/Nine程混沌とはしていなく、SSL程無機質でもなく、Mona Lisa OVERDRIVE程攻撃一辺倒でもないという点では、問題作という程ではないのかもしれませんw
一曲目から、今井さんメインのツインヴォーカル、スカスカなバンドサウンドにキッチュでノイジーなシンセサウンドが絡む、BUCK-TICKというよりはLucyっぽい異色作「DADA DISCO -GJTHBKHTD-」からスタートするのが、このアルバムのコンセプトを体現しているように感じます。
BUCK-TICKのアルバムの一曲目は、意外とポップで勢いのある曲である事が多かったので、いきなりの変化球です(笑)。
シングルに収録された曲は全てアルバムバージョンとなっていて、「エリーゼのために -ROCK for Elise-」は、Aメロ、Bメロ、サビで、ヴォーカルにそれぞれ異なるエフェクトがかけられ、間奏ではドラムの残響がカットされていたりと、よりデジタルな印象へ。
ヴォーカルにエフェクトがかけられているため、シングル版と比べ好き嫌いが分かれそうではありますが、こっちを聴き慣れると、シングル版が物足りなく感じたりするので、中毒性は高いかも(笑)。
副題も変わった「MISS TAKE -I'm not miss take-」は、今井さんのアルペジオが歪み、英彦さんのリフもリバーブが強くかかり、全体的にノイジーになった印象で、カップリング曲だった「ONLY YOU -WE ARE NOT ALONE-」は、イントロ以外のシンセが全て取り除かれ、生のホーン・セクションが加えられ、パワフルでお洒落な感じになりました(笑)。
「夢見る宇宙 -cosmix-」は、一番変化がわかりづらいかも。全体的にギターを使ったノイズが強烈になり、ヴォーカルがぼやけた感じだったシングル版と比べ、鮮明になったところかな?
大きな期待と若干の不安を持ちつつ、聴きましたが、流石はBUCK-TICK、今回もファンを驚かせる要素が沢山です。
基本は前作「天使のリボルバー」からの、シンプルなバンドサウンドを継承しているのですが、打ち込みやノイズも多く使われ、ポップかつ癖のあるメロディが飛び出す、初期のアルバムや「ONE LIFE, ONE DEATH.」を思い出す感じがしました。
アンビエント的な、不思議な浮遊感を持つ「Tight Rope」は、2007年にバンドサウンド中心の構成でリメイクされ、ラップのような語りとトライバルビートが目立つ「Living on the net」は、この頃のアルバムには必ず一曲は入っている、今井式変態ナンバー(笑)。
アルバムのラストは、キーボード中心の、安らかな曲調のバラード「COSMOS」で〆。
近年のライブでも「JUPITER」と並び、アンコールのラストで歌われることが多く、アレンジも少しずつ変化しているようです(星野さんがキーボードを弾かなくなったり)。
楽曲も今まで以上に新たな試みが取り入れられ、ダンサブルな「スピード」
12弦のアコギによる、BUCK-TICKの代表的バラード「JUPITER」
ツインギターソロを取り入れた「さくら」
フレットレスを搭載したダブルネックギターが使われた「Brain Wisper Here Hate is Noise」
ベースがシンセベースのようにスタッカート気味な「M・A・D」
そして、今井さんによるギターシンセがプレイされた「地下室のメロディー」「太陽ニ殺サレタ」
と、簡単に書いてもこれだけ多彩な楽曲が並び、それでもアルバム全体に統一感がある
のは、流石としか言いようがありません。(;´∀`)
ファンの間でも、未だ最高傑作と名高い、名実共に名盤です!
・お気に入りの曲
スピード
Brain,Whisper,Head,Hate is noise
太陽ニ殺サレタ
内容は、キラキラした軽いギターにシンプルな8ビート、そしてポップなメロディを歌うボーカルと、初期B-Tの定番サウンド。
初期ならではの音の悪さ、声の細さも目立ちますが、メロディや曲の構成自体は良いので、現在の彼らがライブで演奏することで、大化けすることも(笑)。
今でもライブで演奏されることもある「HURRY UP MODE」「MOONLIGHT」や、公式人気投票では上位に入る「FLY HIGH」等、B-Tを深く知りたい方には、やはり欠かせないアルバムかも。
余談ですが、1986年に発売されたインディーズ盤では、本作でカットされている曲が2曲入ってたり、2002年に発売されたデジタルリマスター盤の初回盤には、彼等のライブSEとして今でも時々使われる「THEME OF B-T」が初音源化されていたりと、それぞれのバージョンにしか収録されてない曲があり、マニアのコレクター魂を刺激する困ったちゃんです(爆)。