アルバム前半はスローナンバーと早く激しい曲を交互に配置していますが、疾走するドラムにメロディアスなギターソロが乗る「鱗」、様々な声を楽器のように乗せるどこか懐かしい「Cause of fickleness」、何年振りだ!?と驚かされた(笑)、8ビートナンバー「Chain repulsion」と、激しめな曲は最近のDIRとは随分印象が異なり、4th〜5thの頃を思い起こさせる曲調となっています。
ただ、折り返し地点である「Midwife」以降は、ミドルナンバーで構成もやや複雑、メロディも覚えにくいという曲が4曲続くため、ここでダレてしまうのが難点ですね(汗)。
シングル「Sustain the untruth」を挟んだ終盤は、音をつめ込まず、最低限の音で組まれた壮大なバラード「空谷の跫音」、絶え間なく暴れ続けるような極悪ナンバー「The inferno」、そして、朔、鼓動の続編となるMVが衝撃的だった「Revelation of mankind」で幕を閉じます。
Revelation of mankindは、MV無しでも、どことなく朔を彷彿とさせる曲調で、DIRお得意の高速三拍子(6/8拍子)メタルで、キャッチーで歌ものが多かったこのアルバムの最後にこれが配置されることで、まるでバッドエンドのような絶望感を感じさせてくれます。
・まとめ
こう書くと、DSSを超えた上で過去と融合させたアルバム…という印象を受けるかもしれませんが、過去作程キャッチーではなく、DSSやUROBOROS程世界観も統一されておらず、人によってはどっちつかずな印象を受けてしまうかもしれません。
Cause of ficklenessやChain repulsionはライブで新たな定番曲となってくれそうなパワーを感じますが、いかんせんミドル、バラードが多く、全体的に間延びした印象になってしまっているのが残念です。
メンバーもそれは感じていたようで、アルバムの全貌が見えてきた頃に追加したというThe infernoは、なんというか完全に手癖で作ったような暴れ曲ですし、Revelation of mankindの前に配置されてしまったので、完全に食われてしまっています。(;´▽`)
アコースティックVerの三曲は、シングル「SUSTAIN THE UNTRUTH」からの再録である流転の塔と同じく、DIRメンバーによるアコースティックアレンジですが、ベースの出番は無く(多分)、DIFFERENT SENSEでは黒色すみれさんのヴァイオリン、獣慾では恐らくShinya演奏によるパーカッションが入っています。
DIFFERENT SENSEはCメロ始まりになっていて、サビのメロディの美麗さがアコースティックアレンジで更に引き立てられているのが印象深いです。
流転の塔と同じく、シャウトは全体的に囁くような声に抑えられています。
six Ugly以来となる久々のミニアルバムで、新曲「Unraveling」を除いた収録曲すべてが、過去の楽曲のリメイクという風変わりなアルバムです(笑)。
10年以上やってるバンドがセルフカヴァーアルバムを出すことは珍しいことではないと思いますが、このバンドの場合は、最早カヴァーとかリメイクなんていうレベルじゃないケースが多いので、今回のアルバムも、ベスト的なものではないと思った方が良いでしょう(笑)。
新曲「Unraveling」は、一見掴み所のわかりにくいミディアムナンバーですが、ヘヴィリフに妖しげなクリーントーン、激しいシャウトから聖歌のようなファルセットまで様々な声が入っていて、今現在のディルらしいサウンドが詰まった曲と言えるでしょう。
一聴しただけじゃ覚えられない複雑な曲構成なんかはまさにそれですね。
再構築曲に関しては、ざっくりと分けると、「かすみ」「THE FINAL」は原曲とほぼ変わらない構成で、現在の七弦ツインギター、五弦ベース編成での録り直しといった感じです。
細かいフレーズの変化を挙げるとキリがないですが、唯一大幅に変わった点は、どちらも間奏にツインギターソロが設けられたことですね。
「業」「鴉」は、原曲の面影を残しながらも新たな姿に生まれ変わり、特に「業」は、原曲の良さと現在のバンドのサウンドが、今作でも一番しっかり噛み合っている印象を受けました。
新たにシャウト乱打のサビが追加されましたが、原曲のリフやメロディもほとんど残っていて、ブレイクからのエフェクティブなギターソロまであります(ソロ自体は大分変わってますがw)。
「鴉」は、サビに入るまでは原曲とほぼ同じ構成ですが、なんとサビは総入れ替えという思い切った展開に。
もちろんサビのあの歌詩も無くなって、新たに書き起こされています。(^^;
「Bottom of the death valley」「Unknown.Despair.Lost」は、原曲とは大きく姿を変えて生まれ変わった印象を受けます。
とは言っても、蜜と唾や霧と繭のように、ほぼ新曲と言ってもいいほどの変化があった訳ではないのですが、原曲を一度解体し、新曲と組み合わせて再構成したような感じです。
「Bottom of the death valley」は、原曲のメロディはほとんど残っているのですが、元々サビだったメロがBメロになり、新たなサビが追加され、サビ後半(?)だったシャウト混じりのメロディは、楽曲後半にCメロとして一度出てくるだけになっていたりと、まるでパズルのように組み替えられています。
それよりも大きく印象が変わったのは、原曲の緩急の激しいドラマティックな曲調とは打って変わって、終始ゆったりとしたテンポで、重々しくも壮大な曲になったこと。
これは賛否両論分かれそうな感じで、私も初聴時にはちょっと戸惑いましたが、これはこれで原曲とはまた違った良さがあるかと思います。
「Unknown.Despair.Lost」は、Bottom〜と同じく、原曲のメロディをバラバラにして、新たなメロディと組み合わせた感じですが、Bottom〜以上に原曲のメロディが細切れにされていて、リミックス音源などでコラージュされた状態を想起させます(笑)。
テンポも、リズム隊がほとんどの箇所でハーフタイムになったため、メロディは同じでも、大分印象が異なっていますね。
しかし、他の5曲はまだしも、この曲はメロディが特にキャッチーなので、今のサウンドと合わせるとちょっと違和感も感じますが。(^^;
前作から二年後にリリースされたDir en greyの6thアルバム。
かつてないほどの暗黒世界を見せつけた、深く狭く重い問題作です。
ヨーロッパの大規模フェスへの出場、アメリカショウケースツアーや、海外のバンドの主催する全米ツアー等にも参加し、活動規模を広げ続けているためか、今回のアルバムは、今まで以上に世間の注目度が高かった気がします。
アルバムの内容的には、前作「Withering to death.」のキャッチーさ、トリッキーさは影を潜め、前々作「VULGAR」に近い作風に戻った感じ。
音に関しては、アルバムを出す度に大きく変化していたギターの位置付けがまた変化し、今回は非常に音がクリアになり、ギターの爆音を維持したまま、ベースやドラムの音を潰すことなく成立しています。
「VULGAR」はギターとドラムが前に出すぎて、ベースが埋もれていましたし、「Withering to death.」では、ベースが前に出た分、後ろに下がったドラムの音は軽くなり、同じく後ろに下がったギターは音が篭ってしまい、全体的にモコモコしたサウンドになってしまっていました。
当時から非常にファン人気の高い、ヘヴィな演奏のミドルナンバー「Bottom of the death valley」と、以降のヘヴィロックへの傾倒の予兆とも言える重厚なリフが登場する「鴉-karasu-」は、近年リメイクされましたが、どちらの曲もサビを中心に別物と言ってもいいくらい変化しているので、本作を未聴の方は聴き比べてみても面白いかもしれません。
強烈な変拍子とメロディアスなサビが組み合わさったシングル曲「脈」は、インディーズ時代からその後の世界進出後まで、Dirの王道とも言える楽曲で、物語性の強いミディアム・ナンバー「理由」「蛍火」等、前作の要素を引き継いだ楽曲もありますが、ファンクのようなリズムとエフェクティブな演奏が絡む「egnirys cimredopyh an injection」や、ミクスチャー…というよりデジロックよりで、メロディよりもリズム隊が主役な「Hydra」等、実験的な楽曲も。
前身であったバンドで既にそれなりの評価を得ていたのもあり、結成と同時にツアーとリリースを重ね、二年でメジャーデビュー、インディーズラストライブを日本武道館で行い、メジャーデビューシングルはYOSHIKIプロデュースの三枚同時リリース等、鳴り物入りでメジャーに殴りこみをかけた(笑)、90年代後半ビジュアル系ブームを代表するバンド、Dir en greyの記念すべきファーストアルバムですっ。