- CDレビュー DIR EN GREY -




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ARCHE

2015/01/18作成

★★★☆


・概要、全体の印象
9枚目のフルアルバムで、前作から三年と四ヶ月ぶりのニューアルバム。
最近は三年に一枚が普通になってきてしまっていますね。(^^;
「UROBOROSやDSSの方向性はやりつくした」「もっと深い方向へも行けたけど、自分達しかわからない音楽を続けるべきなのか」「頭の中で考えながら演奏していて、ライブを楽しめていない」「海外公演での度重なる機材トラブルを経て、最悪クリック無しでも演奏できるように」という発言が近年多く語られていた通り、プログレメタル的な世界観から脱却し、シンプルな曲、短い曲が大半を占めています。

・収録曲について
シンプルな曲…とは言っても、あくまで前作と比べてのことで、一般的な基準と比べればかなりマニアックな曲構成が多く、メロディーはキャッチーでも、素直な曲は少なめです(笑)。
その中でも、メロディアスなミドルナンバーで、Aメロ→Bメロ→サビという王道展開な「Un deux」を一曲目に持ってきているのが、本作が前作までとは異なる方向性のアルバムだということを更に印象付けています。

アルバム前半はスローナンバーと早く激しい曲を交互に配置していますが、疾走するドラムにメロディアスなギターソロが乗る「鱗」、様々な声を楽器のように乗せるどこか懐かしい「Cause of fickleness」、何年振りだ!?と驚かされた(笑)、8ビートナンバー「Chain repulsion」と、激しめな曲は最近のDIRとは随分印象が異なり、4th〜5thの頃を思い起こさせる曲調となっています。

スローナンバーは重量級なギターリフとベース、浮遊感のあるアルペジオで構成された曲が多く、こちらは近年の曲から複雑さを取り払ったような印象です。
どちらにも言えるのは、昔に戻った訳ではなく、7th〜8thを血肉に変えた上での、過去を彷彿とさせる曲調になっているということ。

ただ、折り返し地点である「Midwife」以降は、ミドルナンバーで構成もやや複雑、メロディも覚えにくいという曲が4曲続くため、ここでダレてしまうのが難点ですね(汗)。
シングル「Sustain the untruth」を挟んだ終盤は、音をつめ込まず、最低限の音で組まれた壮大なバラード「空谷の跫音」、絶え間なく暴れ続けるような極悪ナンバー「The inferno」、そして、朔、鼓動の続編となるMVが衝撃的だった「Revelation of mankind」で幕を閉じます。
Revelation of mankindは、MV無しでも、どことなく朔を彷彿とさせる曲調で、DIRお得意の高速三拍子(6/8拍子)メタルで、キャッチーで歌ものが多かったこのアルバムの最後にこれが配置されることで、まるでバッドエンドのような絶望感を感じさせてくれます。

完全生産限定盤付属のDISC2には、ライブSEを生演奏で再現したというインストナンバー「and Zero」、音を軽くすれば、初期のDIRが演奏しててもおかしくなさそうな(笑)王道展開なミドルナンバー「てふてふ」、そしてアルバム収録曲やUnravelingのリミックスやアコースティック版等が収録されています。

・まとめ
こう書くと、DSSを超えた上で過去と融合させたアルバム…という印象を受けるかもしれませんが、過去作程キャッチーではなく、DSSやUROBOROS程世界観も統一されておらず、人によってはどっちつかずな印象を受けてしまうかもしれません。
Cause of ficklenessやChain repulsionはライブで新たな定番曲となってくれそうなパワーを感じますが、いかんせんミドル、バラードが多く、全体的に間延びした印象になってしまっているのが残念です。
メンバーもそれは感じていたようで、アルバムの全貌が見えてきた頃に追加したというThe infernoは、なんというか完全に手癖で作ったような暴れ曲ですし、Revelation of mankindの前に配置されてしまったので、完全に食われてしまっています。(;´▽`)

もう少しスローナンバーを減らすか、いっそ曲数を削るかした方がアルバム全体のバランスが良くなったんじゃないのかなあ、と思いましたが、どうやらメンバー自身も、本作はアルバム全体の世界観よりも、曲それぞれのキャラを立たせることを優先したみたいなので、練り込み不足…ということではないのかもしれません。

最後に不満ばかりで纏めてしまいましたが、勿論良い曲もありますし、DIRは変化を恐れないバンドなので、この曲達がライブを経てどう成長するか、そして次のステップではどういった進化を見せてくれるのか、凄く楽しみです。

各曲の原曲は、鱗、Phenomenonが薫、濤声、懐春、てふてふがDie、MidwifeがToshiya、Chain repulsionがShinyaというところまではインタビュー等で確認出来ました。


・お気に入りの曲
Phenomenon
Sustain the untruth
Revelation of mankind





今回は、3月8日〜9日に行われた、DUM SPIRO SPEROの集大成となった武道館公演を収録したDVDの、初回盤に付属したリアレンジアルバムのレビューです。

インスト曲である「狂骨の鳴り」以外の全てのDSS収録曲が様々な手法でリアレンジされ、オリジナルの曲順通りに収録されているという、ライブDVDのおまけとしては豪華過ぎるアルバムです(笑)。

大きく分けると、
THE BLOSSOMING BEELZEBUB
LOTUS
DIABOLOS

激しさと、この胸の中で絡み付いた灼熱の闇
この5曲が、DSS限定生産盤のAMONのようなシンフォニックVer。

DIFFERENT SENSE
獣慾
流転の塔
この3曲はDIRメンバーによるアコースティック・バージョン。

AMON
「欲巣にDREAMBOX」あるいは成熟の理念と冷たい雨
VANITAS
これらはフルートやピアノ、ウッドベース奏者によるクロスオーバージャズ的なアレンジ(VANITASのみ別アーティストによるアレンジ)。

滴る朦朧
DECAYED CROW
の2曲はエレクトロ系のリミックス、となっています。

アルバム購入者限定ライブで披露され、その後も一部の曲はライブで演奏され続けたシンフォニックVerが、まさかここで音源化するとは思いませんでした(笑)。
更に今回は、最近BUCK-TICKの音源にも参加した、黒色すみれのさちさんがバイオリンとヴィオラで参加していて、ライブ音源より更に豪華になっています。(*´▽`)
ヴォーカルとバンドの演奏は基本的にそのままで、LOTUSはアルペジオが抜かれたりしているのも、ライブの時と同じアレンジですね。
注目すべきは、ライブでは演奏されなかったDIABOLOSですね!
曲の長さはそのままに、サビ前でヴォーカル以外が消えるブレイクや、最後のサビの入りではヴォーカルとストリングスだけになったりと、メリハリの効いたドラマチックなアレンジになっていて、更に曲が終わった後もしばらくオーケストラの演奏が続いたりと、この一曲のために初回盤買ったかいがあったと思いました。(*´▽`)

アコースティックVerの三曲は、シングル「SUSTAIN THE UNTRUTH」からの再録である流転の塔と同じく、DIRメンバーによるアコースティックアレンジですが、ベースの出番は無く(多分)、DIFFERENT SENSEでは黒色すみれさんのヴァイオリン、獣慾では恐らくShinya演奏によるパーカッションが入っています。
DIFFERENT SENSEはCメロ始まりになっていて、サビのメロディの美麗さがアコースティックアレンジで更に引き立てられているのが印象深いです。
流転の塔と同じく、シャウトは全体的に囁くような声に抑えられています。

クロスオーバー系アレンジの三曲は、ピアノやフルートを使ったジャジーな演奏で、ヴォーカルは原曲のままで、バンドの演奏は外部ミュージシャン達の演奏に全て差し替えられている感じです。
AMONは、原曲が三拍子だったことを思い出させてくれる、体感テンポが半分に抑えられたアレンジになっていますw
欲巣〜はピアノとウッドベースが強調され、ジャズ要素が特に強めに感じるアレンジですが、サビの狂ったようなシャウトは健在で、そこからフルートソロに繋がってBメロに流れたりと、凝ったアレンジを聴かせてくれます。(*´▽`)

VANITASは別アーティストによるアレンジで、クラシックギター(もしかしたら民族系の弦楽器かも)とフルートを中心とした演奏で、原曲とはまた違った哀愁と悲壮感を感じさせてくれます。

リミックス系の二曲、滴る朦朧は、昔のDirのカップリング曲でよく入っていたタイプのリミックスで、ちょっと好き嫌い出そうな感じですね。(;´▽`)
ジリジリと鳴るノイズは中毒性はありますが。(^^;
DECAYED CROWは今回一番のビックリ曲で(笑)、演奏時間が原曲より5分以上伸び、その延長した大部分はずっと耳障りなノイズが鳴り続けているだけというぶっ飛びっぷりw
後半3分で原曲通りの展開になるのですが、京の声にエフェクティブな加工がされていて、京は普段声をほとんど加工しないので却って新鮮です(笑)。
そしてこういうデジタルな加工も、意外と合うんだなあと気付かせてくれましたw


武道館ライブでも披露されたシンフォニックVerに、ヴォーカルも新録したアコースティックVer等、これ一枚でも売れるんじゃないかというくらい密度の濃いアルバムなので、DUM SPIRO SPEROが好きな人でしたら、絶対に後悔しないと思いますよ。初回盤高いですけど。(^^;
欲を言えば、武道館で披露された、狂骨の鳴りのロングバージョンも入れて欲しかったのですが、既に収録時間73分ですし、難しかったのかなあ。(;´▽`)


☆お気に入り曲

THE BLOSSOMING BEELZEBUB (Symphonic Ver.)
DIABOLOS (Symphonic Ver.)
暁 (Symphonic Ver.)


DUM SPIRO SPERO AT NIPPON BUDOKAN 初回限定盤
2014/07/28作成

★★★★☆





six Ugly以来となる久々のミニアルバムで、新曲「Unraveling」を除いた収録曲すべてが、過去の楽曲のリメイクという風変わりなアルバムです(笑)。
10年以上やってるバンドがセルフカヴァーアルバムを出すことは珍しいことではないと思いますが、このバンドの場合は、最早カヴァーとかリメイクなんていうレベルじゃないケースが多いので、今回のアルバムも、ベスト的なものではないと思った方が良いでしょう(笑)。

新曲「Unraveling」は、一見掴み所のわかりにくいミディアムナンバーですが、ヘヴィリフに妖しげなクリーントーン、激しいシャウトから聖歌のようなファルセットまで様々な声が入っていて、今現在のディルらしいサウンドが詰まった曲と言えるでしょう。
一聴しただけじゃ覚えられない複雑な曲構成なんかはまさにそれですね。
再構築曲に関しては、ざっくりと分けると、「かすみ」「THE FINAL」は原曲とほぼ変わらない構成で、現在の七弦ツインギター、五弦ベース編成での録り直しといった感じです。
細かいフレーズの変化を挙げるとキリがないですが、唯一大幅に変わった点は、どちらも間奏にツインギターソロが設けられたことですね。
「業」「鴉」は、原曲の面影を残しながらも新たな姿に生まれ変わり、特に「業」は、原曲の良さと現在のバンドのサウンドが、今作でも一番しっかり噛み合っている印象を受けました。
新たにシャウト乱打のサビが追加されましたが、原曲のリフやメロディもほとんど残っていて、ブレイクからのエフェクティブなギターソロまであります(ソロ自体は大分変わってますがw)。
「鴉」は、サビに入るまでは原曲とほぼ同じ構成ですが、なんとサビは総入れ替えという思い切った展開に。
もちろんサビのあの歌詩も無くなって、新たに書き起こされています。(^^;
「Bottom of the death valley」「Unknown.Despair.Lost」は、原曲とは大きく姿を変えて生まれ変わった印象を受けます。
とは言っても、蜜と唾や霧と繭のように、ほぼ新曲と言ってもいいほどの変化があった訳ではないのですが、原曲を一度解体し、新曲と組み合わせて再構成したような感じです。
「Bottom of the death valley」は、原曲のメロディはほとんど残っているのですが、元々サビだったメロがBメロになり、新たなサビが追加され、サビ後半(?)だったシャウト混じりのメロディは、楽曲後半にCメロとして一度出てくるだけになっていたりと、まるでパズルのように組み替えられています。
それよりも大きく印象が変わったのは、原曲の緩急の激しいドラマティックな曲調とは打って変わって、終始ゆったりとしたテンポで、重々しくも壮大な曲になったこと。
これは賛否両論分かれそうな感じで、私も初聴時にはちょっと戸惑いましたが、これはこれで原曲とはまた違った良さがあるかと思います。
「Unknown.Despair.Lost」は、Bottom〜と同じく、原曲のメロディをバラバラにして、新たなメロディと組み合わせた感じですが、Bottom〜以上に原曲のメロディが細切れにされていて、リミックス音源などでコラージュされた状態を想起させます(笑)。
テンポも、リズム隊がほとんどの箇所でハーフタイムになったため、メロディは同じでも、大分印象が異なっていますね。
しかし、他の5曲はまだしも、この曲はメロディが特にキャッチーなので、今のサウンドと合わせるとちょっと違和感も感じますが。(^^;

全体的な印象としては、ミニアルバムというのもあるからだとは思うのですが、アルバムの世界観や楽曲の方向性がしっかりと纏まっているDIRにはめずらしく、全体的にバラバラで、起承転結がぼやけた印象を受けます。
リメイク曲がシングルのカップリングに収録された事が多かったからか、まるでカップリングベストを聴いているような気分になったりも。(^^;
収録曲自体は勿論面白いですし、完成度も高いのですが、アルバム全体の纏まりという意味では、ちょっとらしくなさも感じるかな?


そして、通常盤の三倍近い価格の(笑)完全生産限定盤には、「MACABRE」やアンプラグド音源を収録したDISC2、映像作品を収録したDISC3が付属。
多分、「MACABRE」目当てにこの限定盤を買った人も多いのではないでしょうか(笑)。
私も最初は迷ったのですが、ただでさえ11分弱あったMACABREが、今回のリメイクで更に長大になり、16分近い楽曲になったと知って、即ポチってしまいました(笑)。
その期待のMACABREは、アコギが追加されたりギターソロがツインになり長くなった以外は原曲とあまり変わらず・・・と思いきや、原曲でアウトロに向かうパートで突然演奏が止まり、全く新しいブロックに突入するというまさかの展開に。
その後はチャーチオルガンが登場したりとドラマティックな展開になり、ギターソロから原曲のアウトロのメロディへ繋がり、そこから原曲のサビをもう一度繰り返して終わるという、16分もあるとは思えないくらい終始気を抜けない、圧倒される楽曲となっていました・・・!
メンバーの薫は、この新たな展開箇所を、第二章的な〜と語っていました。

アンプラグド音源は、「Unraveling」は、ピアノの他に、アナロギーなノイズが入ったホラーチックなアレンジで、どことなくMAGGOTSのアンプラグド版を思い出す・・・と思ったら、同じ人がアレンジを担当したようです(笑)。
「THE FINAL」は、大胆なオーケストラアレンジになっていて、まるで世界の終わりのような悲壮感が・・・w
これアンコールの最後とかにやられたら、凄い空気になりそうw

DVDの収録内容は、昨年12月のライブから、「滴る朦朧」と「獣慾」のライブ映像、「輪郭」と「霧と繭」のスタジオライブ、そして「Unraveling」のレコーディング風景と、本作に対してのメンバー個別インタビューという構成。
ライブ映像2曲は、輪郭の限定盤DVDから漏れてしまった2曲ですね。勿論シンフォニックアレンジではありませんが。(^^;
スタジオライブは、UROBOROSの時とは違い、ライブ映像に引けをとらない程に格好良くて、期待していなかっただけに驚きでした。
輪郭と霧と繭でライティングの演出が、黄金→蒼白と、対照的になるのも面白いですね。
・・・と書いてから観直してみたら、霧と繭の方は映像を加工しただけかも。(^^;
レコーディング風景はいつもの感じで(笑)、メンバー個別インタビューは、何度も観るものでもありませんが、内容自体はかなり濃いですね。
京が普通に顔を見せて喋ったり笑ったりしてるの観たのって何年ぶりだろう・・・w


総評として、MACABREの凄まじさを知ってしまうと、もう限定盤を勧めるしかありません(笑)。
DVDは個人的には「輪郭」の方が充実した内容だと思いましたが、一見寄せ集めに見えるこちらも、充分見応えのあるものでしたよ。


☆お気に入り曲


Bottom of the death valley
MACABRE


THE UNRAVELING
2012/04/29作成

★★★★





2011年9月、DUM SPIRO SPEROを引っさげた国内ツアーがこれから始まる!
というタイミングで発表され、物議を醸した(笑)、7thアルバム「UROBOROS」のリマスター+α盤です。

最新作「DUM SPIRO SPERO」のミックスを手掛けた、海外のエンジニア「チュー・マッドセン」によるミックスで、新たに生まれ変わったUROBOROSで、再レコーディング等は一切されていないものの、原盤とは大分音のバランスが変わっています。
原盤を聴き込んでいる人なら、すぐにでも違いがわかると思います。
まず、ボーカルがかなり前に出て、シャウトやグロウル部分にはリバーブが強めにかけられています。
ディルに限らず、アイドル視されるのを嫌がるビジュアル系バンドは、ボーカルパートを小さくする傾向にありますが、現在のディルのようなヘヴィロック路線だと、演奏に埋もれてしまう事が多いので、このバランスは正解かな?
他に、ギターとドラムは逆に引っ込み、あのドロドロゴワゴワしたギターは、サラっとした、わりと耳当たりの良い音になりました。
ドラムも全体的にスッキリし、音の分離が良くなったため、キックやスネアの連打も、綺麗に粒が揃って聴こえます。

メンバー自身も言っていましたが、原盤の修正版という訳ではなく、あくまで別解釈のUROBOROSと言った感じで、バランスの整った、綺麗な印象なのが今作だとしたら、良い意味で汚れた、混沌とした原盤のミックスも捨て難いものがあります。
「VINUSHKA」や「我、闇とて・・・」は、音の整った今作の方が好きですが、「慟哭と去りぬ」や「STUCK MAN」は、ぶっとい音のドラムや、ギターの濁った原盤の方が好きだったりと、アルバム単位ではなく、曲単位でもそれぞれに個性があって面白いです(笑)。
特に「BUGABOO」は、イントロの音圧から圧倒されます!

ミックス以外での変更点は、一曲目の「SA BIR」が、ライブ開演時のSEに使われたロングバージョンに差し替えられています。
UROBOROSの武道館公演DVDで聴けるやつですね。
他に、「我、闇とて・・・」の後ろに、DOZING GREENのカップリング曲「HYDRA 666」が収録され、原盤のアナログ盤の「BUGABOO」のアウトロに収録されていたらしい、2分近く京がBUGABOOのメロディを囁く「BUGABOO RESPIRA」が、BUGABOOの前に追加。
HYDRAは、シングル版のミックスがあまりよろしくなかったのですが、今作ではもちろん、新たなミックスで生まれ変わり、大分聴きやすくなりました。
BUGABOO RESPIRAは・・・ファンの間でお経と呼ばれていたので、てっきり、ライブでの京のアカペラタイムみたいな、リバーブ掛かりまくりでカオティックなものを想像していたら、全編加工一切無しの囁きボイスでした。

そしてそして、私的に最も嬉しかったのが、シングル曲「DOZING GREEN」と「GLASS SKIN」が、シングル版の日本語詩バージョンでの収録になったこと!
私にとって、原盤での唯一の不満点が、この二曲の英歌詩バージョンだったので、他の追加要素と相俟って、やっと理想の「UROBOROS」が聴ける!と喜んでました(笑)。
今作発売時の雑誌インタビューで京が語っていましたが、原盤の英歌詩版は、京自身も不服だったそうなので、今作で日本語版が入って本当によかったです。
不服だった理由は、海外への宣伝で英歌詩版を使いたいので、シングル二曲を英歌詩にしないと海外で宣伝しない、と言われ、仕方なく英歌詩版を作ったら、海外でも日本語版が宣伝に使われていたから、とのこと。
京はこれ以降、不満を抑えての妥協は絶対しない、と決めたとか。(^^;

UROBOROSの完全盤とも取れる今作ですが、前述のとおり、原盤にも独特の魅力がありますし、初回盤に収録されていたアンプラグド版はこちらでは聴けません。
これからDIRを聴きたいという方には、聴きやすくなっている今作をお勧めしますが、ドロドロとしたカオスな音色や、初回盤のアンプラグド版が気になるようでしたら、原盤もお勧めしたいです(笑)。


☆お気に入り曲

VINUSHKA
BUGABOO
INCONVENIENT IDEAL

UROBOROS
[Remastered & Expanded]
2012/03/17作成
★★★★★





前作から二年九ヶ月もの間を開けてリリースされたアルバムで、ツアーを挟みつつレコーディングされたため、製作期間は一年半にも及んだそうです。

前作がキャッチーさとマニアックさを双方兼ね備えた傑作アルバムだったので、同じようなアルバムは作らないであろうこのバンドの次の一手は、メンバーのインタビューで語られた「聴き手に優しくない」という言葉や、先行シングルに収録された「罪と規制」の曲調から、もしやドゥームメタル等、呪術的な曲調を基調としたアルバムになるのでは、と予想していました…が。
それ系の曲もあるものの、それ一辺倒になるわけではなく、ディルらしく様々なアイディアが注ぎ込まれた、一言でのジャンル分けが今まで以上に出来ないアルバムとなっていました(笑)。

前作のような曲調の多彩さを持ちながら、前作よりアルバム全体のカラーが統一されているように感じるのは、ギター隊が七弦ギター中心になり、アコギや、エフェクターを駆使した飛び道具的な奏法があまり使われていないからかな?
10分弱の大作「DIABOLOS」も、曲調が変化はするものの、前作の「VINUSHKA」のように、ガラッと場面が変わるような展開は無かったりします。
比較的キャッチーな曲は、シングル三曲と、正統派ダークバラードの「VANITAS」くらいで、ドゥーム的な重苦しい曲調で、同じ展開が出てこない一方通行な曲(メンバー談)「THE BLOSSOMING BEELZEBUB」や、じわじわと拍子が変化していく「滴る朦朧」、サビ(?)で発狂したかのように倍テンになる「「欲巣にDREAMBOX」あるいは成熟の理念と冷たい雨」など、バンド史上でも類を見ないほどの変態ナンバーが並びます(笑)。
変態とまでは行かずとも「獣慾」や「流転の搭」等は、先の展開が読めない曲構成になっていて、数回聴いた程度では構成を覚えることが出来ないほど。

それ以外にも、久々にギターソロが披露された先行シングル「DIFFERENT SENSE」に続き「獣慾」「DIABOLOS」「VANITAS」でも、どことなくシンフォニックな匂いのする華麗なツインギターソロが披露されています。 ちなみにシングル三曲は全てリミックスされています。
最新シングルの「DIFFERENT SENSE」はほとんど変わっていませんが、「LOTUS」は、ボーカルが前に出て、全体的にリバーブ(残響音)が強くかかり、深みが増しました。
「激しさと、この胸の中で絡み付いた灼熱の闇」も同じ手解きが加えられているのですが、シングル版と比べ、ギターがかなり下がってしまっているので、ちょっと好みが分かれそうなミックスですね。(^^;
この曲だけはギターを七弦ギターで録り直したそうですが、それが原因なのかはわかりません(汗)。

試行錯誤とまでは行かないものの、新たなアイディアを、今まで以上にこれでもかと詰め込んだかのようなアルバムなので、過渡期というか、将来的にバンドが更なる進化を遂げるための叩き台のような作品になるような気がします。
ラストの「流転の搭」が、どこか始まり、次を予感させるような曲調なのが、その予感を更に後押ししているのかもしれません。

原曲の作曲者は、インタビュー等の発言から、「欲巣〜」は京、「暁」「滴る朦朧」はToshiya、「VANITAS」はDieのようです。


「完全生産限定盤」には、アルバム曲のリミックス等を収録したCD(disk2)と、レコーディング風景やインタビューを収録したDVD、更に、アルバム本編を収録したアナログ盤がついてきます。
歌詞カードも、アナログ盤を収納するために大型化されたジャケットに合わせた大型のものになっていて、まるで詩集本のようになっていて素敵です。

私が一番期待していたのは勿論disk2で、リメイクされた「羅刹国」は、七弦ギターとデスヴォイスで、原曲の何倍も凶悪に(笑)。
最近のアルバムでは定番の、アルバム曲のバージョン違いは、バンド演奏にストリングスやピアノを重ねた、「AMON」のシンフォニックバージョンに、ピアノと歌のみにアレンジされた「流転の搭」アンプラグド。
更に、前作に「DOZING GREEN」のデモ版が収録されたように、今作では「DIABOLOS」「暁」のデモ版が収録されています。
とはいっても、シングルだった「DOZING GREEN」とは違い、完成版と同時のリリースなので、あまり新鮮味を感じないのが残念ですが。(^^;
「DIABOROS」は中盤の倍テンになるパートがごっそり削られ、シンプルなダークバラード調になっていて、「暁」は、完成版と比べ、シャウトが圧倒的に多いです。

更に更に(笑)、約八年半振りになる、メンバー自信によるリミックス音源も収録されました。
「DRAIN AWAY」のカップリング以来ですよ。(^^;

電子的で無機質な「THE BLOSSOMING BEELZEBUB」は薫、オリエンタルな音階と赤子の泣き声が不気味な「「欲巣にDREAMBOX」あるいは成熟の理念と冷たい雨」はToshiya、変拍子だった原曲を、四拍子に切り貼りした「滴る朦朧」はShinya、コーラスが強調され、妖しさが増した「暁」はDie、ノイズと和風な音色でカオスにアレンジされた「DECAYED CROW」は京によるリミックス。
この中だと、「滴る朦朧」が特に、原曲とはまた違った魅力を放っていて面白いかな。



☆お気に入り曲

THE BLOSSOMING BEELZEBUBE
DIFFERENT SENSE
流転の塔


DUM SPIRO SPERO
2011/12/18作成

★★★★☆





完全生産限定盤、初回盤、通常盤の三種類が発売され、私が買ったのは初回盤です。
今までのDirのアルバム中、ジャケットアートの格好良さはナンバー1だと思う。(*´Д`)

今回のアルバムを聴いての、第一印象は「THE MARROW OF A BONE+MACABRE」といった印象でした。

多彩な声色を使い分けるヴォーカルと、各パートがはっきり分離されたバンドサウンドは「MARROW〜」のサウンドを引き継いでいますし、
民族的、宗教的なメロディラインや、不気味さを演出するギターのアルペジオや、タムによるトライバルビートを始めとした楽器隊の手数の多さは、まさに「MACABRE」です。

「VULGAR」以降、アルバム発売の度に変化していたサウンドメイクは、前作でのエンジニア交代で落ち着いたのか、前作と同じく、弦楽器隊や、ドラムの音一つ一つが綺麗に分離していて、ヘヴィかつクリアな質感を持っています。

そのため、ギターが軽いとか、ドラムの音がペタペタしていると感じ、不満の声も上がっているみたいですが、どうやら意図的なもののようです。

「Withering to death.」から、ギターの過度なオーバーダビングをやめ、音の密度よりも、繊細さを重視するようになったので、他のヘヴィネス系のバンドと比べ、Dir en greyのCDは音が小さめになっていると、ギターの薫かDieがインタビューで語っていましたしね。

今回、ドラムのタムの音が、チャンネルの左右めいっぱいに配置されていて、ヘッドホンで聴いていると面白いです。
LIVEで使っているセットでレコーディングし、客席から見た向きを再現して、タムの鳴る位置を決めたそうです。

前作にはあまり無かった、構成の変わった曲が多いのも、結構好きです。
「RED SOIL」は曲調がコロコロ変わって面白いですし、「慟哭と去りぬ」では、ヘヴィなサウンドを、3/4拍子に乗せてしまったり、「STUCK MAN」では、イントロからアルペジオとカッティング、スラップが混ざり合っていたり、「冷血なりせば」では、タッピングも登場します。

そして勿論、激しいシャウトだけでなく、京のエモーショナルな歌唱が全面に押し出された曲も、今回は多めです。

そして何より強烈なインパクトを与えたのは、それらの、アルバム全ての要素を一曲に凝縮させたかのような、9分にも及ぶ大作「VINUSHKA」でしょう!
過去の大作「MACABRE〜」や「Mazohyst〜」とは違い、曲の展開がどんどん変化し、歌も楽器隊もあらゆる音で魅せてくれます。


今回も凄いアルバムだったのですが、残念な点を挙げるとしたら、英歌詩になったシングル二曲でしょうか(汗)。
特に「GLASS SKIN」は、シングルの日本語の方が断然良いと思います。(^^;

後、初回盤Disc2のアンプラグドアレンジは、なんか微妙な感じ・・・(汗)。
01はピアノがちょっと重すぎる気がするし、02は、パイプオルガンがマッチしているのですが、マッチしすぎていて、平凡になってしまっている感じ。
03はほとんど別曲になっているので、これは聴き込めば印象が変わるかも?


今回、京が「歌いすぎたかな」と言っていた通り、歌モノが多く、更にハードな曲でもサビがメロディアスになる曲が予想以上に多かったです。
ですが、メロディアスなのではありますが、決してポップだったりキャッチーだったりとは言い難い罠もあり(笑)、今作もやはり、初心者には向かなさそうなアルバムですね。(^^;


雑誌のインタビューで、原曲を持ってきたメンバーがある程度判明していますが、簡単なリフ程度を持ってきて、メンバー全員で料理しているそうなので(メロディは全て京)、原曲作曲者を知る必要も、あまりなくなってきた気がします・・・(^^;

03、07がDie
09が京
08は不明
そしてそれ以外全てが薫だそうです。


☆お気に入り曲

VINUSHKA
BUGABOO
INCONVENIENT IDEAL

UROBOROS
2008/11/25作成
2008/11/29加筆修正
★★★★☆





前作から二年後にリリースされたDir en greyの6thアルバム。
かつてないほどの暗黒世界を見せつけた、深く狭く重い問題作です。

  ヨーロッパの大規模フェスへの出場、アメリカショウケースツアーや、海外のバンドの主催する全米ツアー等にも参加し、活動規模を広げ続けているためか、今回のアルバムは、今まで以上に世間の注目度が高かった気がします。
アルバムの内容的には、前作「Withering to death.」のキャッチーさ、トリッキーさは影を潜め、前々作「VULGAR」に近い作風に戻った感じ。

今回のアルバムは、歌モノと、メタル的なハードナンバーがきっちりと区別されているのも特徴ですね。
02、04、05、12等、ギターはリズム隊と一体になり、楽曲は、疾走感よりも重厚なグルーヴに重点を置いたものが増えました。
不思議なループ感を持つ、今までのDirに無かったタイプの08も、中々面白いと思う。人気はないみたいですが。orz

逆に、綺麗なメロディを活かした楽曲は、01、06、09、10くらいでしょうか。
01の「CONCEIVED SORROW」は、「DRAIN AWAY」や「dead tree」等で示されてきた、Dirの持つ悲壮感漂う曲の、ひとつの極みとも言えるでしょう。

メロディアスかつ破壊的な曲は、M03の「THE FATAL BELIEVER」くらいだったりします。

音に関しては、アルバムを出す度に大きく変化していたギターの位置付けがまた変化し、今回は非常に音がクリアになり、ギターの爆音を維持したまま、ベースやドラムの音を潰すことなく成立しています。
「VULGAR」はギターとドラムが前に出すぎて、ベースが埋もれていましたし、「Withering to death.」では、ベースが前に出た分、後ろに下がったドラムの音は軽くなり、同じく後ろに下がったギターは音が篭ってしまい、全体的にモコモコしたサウンドになってしまっていました。

06「凌辱の雨」と13「CLEVER SLEAZOID」は、今回のアルバムに合わせ、再レコーディングされ、特に13は、シングル版の10倍は凶悪になっています(笑)。

10「艶かしき安息、躊躇いに微笑み」では、クリーントーンのギターに、アンプを通さないで手元にマイクを近づけて録ったエレキの生音を重ねて作った音を使っていたりと、ただ重圧で押すだけでない拘りが見え隠れしています。
アコギの質感とも、クリーンの質感とも違うクリアな音を求めた末の手法なのでしょうか。
ドラムに関しては、レコーディングであるアイディアを実行し、タムやスネアの音が篭らないように工夫したそうです(詳しくは、一月発売のGIGSのインタビューをw)。


今回のアルバムは、メンバーの薫の言うとおり、聴く側に優しくないアルバムだと思うので、一度聴いて気に入らなくても、何度か聴いてみると、結構評価が変わるかもしれません。
しかし、この歌詩カードの読み辛さはなんとかならないのか・・・(;´Д`) 最後ページのクレジットまで読めないし_| ̄|○


原曲作曲者は、私の知っている限りでは、01、02、08が薫、09がShinyaだそうです。


初回盤には、01、09、10のアコースティックアレンジを収録した、UNPLUGGEDディスクが付いています。
それぞれ、ピアノ、オーケストラ、アコギ二本でアレンジされ、じっくりと「歌」を聴けるので、もしこれからこのアルバムを買うなら、絶対初回盤がお勧めです。



☆お気に入り曲

CONCEIVED SORROW
ROOTING ROOT
CLEVER SLEAZOID

2007/02/15作成
2008/09/23加筆修正
★★★★





Dir en greyの5枚目のフルアルバムで、多彩なギターアプローチとトリッキーな展開が多く見られる野心作。

  前作「VULGAR」で、へヴィな方向性は極めてしまった気もしたので、今回はどういうコンセプトで攻めてくるのか、期待と不安を抱きながら楽しみにしていました。

全体的な印象は、三枚目のアルバム「鬼葬」に近い印象だったなあ、と思いました。 爆走系からバラードまでナンデモアリな所なんて特に(笑)。 01や、シングルでもある03なんかは、前作の路線に近い、弦楽器隊三人のヘヴィなユニゾンプレイですが、02では、まるで90年代初期のビジュアル系のような、メロディックメタル的な曲調も。
ツインギターが効果的に使われていて、何度聴いても飽きません

今作は、ツインギターならではの、役割分担されたギターアンサンブルが際立っていますね。
07、11は、「six Ugly」風味な曲調ながら、所々にフックを効かせたギターフレーズが散りばめられていますし、04なんかは、歌のメロディよりも、ギターのフレーズの方が強く印象に残ります。

06、08、12等は、カッティングを多用した変則疾走ナンバーで、近年のヘヴィロック路線と、彼らが初期から持っていた手法が気持ちいいくらい融合していて、ただ洋楽メタルを猿真似しただけでは出来ない、彼ら特有の音楽性が確立された感じもします。

09では、サビで6/8拍子になったりと、展開も複雑で面白い。

05、13は、クリーントーンを多用したバラードナンバーで、「MACABRE」に収録されていても違和感ないくらい、彼らの持ち味である美メロが活かされた良曲。
特に13は、Shinyaのタム回しと、Dieの12弦ギターも聴き所。

様々な彼らの特色が出ているこのアルバムを締めくくる14「鼓動」は、前作のラストナンバー「AMBER」を更に突き詰めたようなヘヴィなデジロック。
前奏とサビのヘヴィリフ、メロのクリーンアルペジオ、間奏のワウプレイと、ブロックごとのギターの変化も面白い。


まるで彼らの引き出しを使い切ったかのようなバラエティ豊富な曲目ながら、芯がしっかり通っていて、散漫な感じになっていないのがポイント。

ただ、音のミックスはあまり宜しくなく、ギターの音は篭り、スネアの音圧が薄く、全体的に迫力に欠けるのが残念。
まあ、本人ら曰く、ギターをオーバーダビングせず、もっとくっきりとした音を出したかったので、他のバンドと比べると、このアルバムの音は若干小さいと思う、と語っていたので、意図的っぽいですね。


私的には、前作「VULGAR」と双璧になるお気に入りアルバムです。
ドラムとギターの爆音っぷりはVULGARの方が好きですが、ギターアレンジに関しては、色々な音色を使い分けたり、小細工を仕込んでたりするこちらの方が圧倒的に好きですね。


前作「VULGAR」が何か物足りないと感じた方は、おそらくこのアルバムで欲求を満たせると思います(笑)。



原曲作曲者は、私の知っている限りでは、01、03が薫、08がToshiya、13がShinyaだった筈。


☆お気に入り曲

朔 -saku-
GARBAGE
鼓動

Withering to death.
2005/10/23作成
2008/09/23加筆修正
★★★★★





Dir en greyの4thアルバムで、現在(2007年1月時点)のDir en greyの方向性を決定付けたとも言えるアルバムで、 ヘヴィネス路線を徹底的に突き詰め、更に密室的な要素をも取り込んだ怪作。

前作「six Ugly」から継承されたハードコア的要素を全面に押し出しながらも、「MACABRE」や「鬼葬」の要素も取り入れ・・・。
・・・というより、上記三作のイイとこ取りをしてると言っても過言じゃないでしょう。

全体的に激しい曲調ですが、爆走や疾走というよりは、憤怒を思わせる激しさですね。
爆音でざらついた音像のギターに、重く濁ったドラムの音が、更に深い暗黒面を強調している感じです。
それと変わって、歌モノはとにかく寂しく、切ない。

静かなSEの後、イキナリ重低音ギターリフ&咆哮で幕を開ける01は、どことなくMACABREの匂いがする曲ですね。
サビは一度しか登場せず、ゆっくりしたノリが、嵐の前の静けさっぽい。
怒りや絶望を感じさせる曲や歌詞ですが、感情的に表面に出す怒りよりも、心の奥へ押し込み、腸煮え滾るような「憤怒」とも言えるものを感じます。
個人的には、間奏のギターソロがお気に入り。

02〜03、は、前作「six Ugly」と、今作の14「CHILDPREY」で得たものを活かした、メタルやミクスチャーロックの要素を織り交ぜたモダンヘヴィネスもの。
02の、重戦車のような破壊的なドラムは、いつ聴いても気持ちいいです。

04〜06は、彼らのインディーズ時代からのウリの一つとも言える、日本的で綺麗なメロディを活かした歌もの。
それぞれに全く別の魅力があり、04は、和製ホラー映画のような不気味さ、05は、2コードで進行する、正に歌が主役な直球アレンジ、そして06は、ヘヴィな中に切なさやノスタルジーを感じる、洋画の世界を髣髴とさせる世界観を持っています。

07ではシャッフルのリズムを取り入れた、リズミカルかつ超攻撃的な曲で、08ではストレートな8ビートで、これもまたダンサブル。

09と11はシングル曲で、どちらも彼ら独特の「和」の要素を持った、ヘヴィネス+美メロと言った感じで、09では、6/8拍子を取り入れ、彼らが当時流行ったモダンヘヴィネスをただ真似ているだけではないことがよくわかりますね。

10と12はストレートなパンキッシュナンバー。
今までの流れからすると、若干インパクト不足な感じも。
間にシングルを挟まず、この二曲は連番にした方が、良い流れになった気がする。

そして、初回盤のDVDにPVも収録された、13は、 気味悪いSEとノイジーなギターリフ、不気味なアルペジオ、スライドを多用したベース、ゆったりしたテンポを重く刻むドラム・・・。
そして七色の声色を使い分けるヴォーカル。
このアルバムを象徴する曲と言っても過言ではない、もう文句なしに凄まじい曲です。(;´Д`)
色々ヴァージョンがあるが、DVDに収録されたPVの、イントロと間奏が長いバージョンが一番好き。

ラストナンバーの15は、ミドルテンポで、歌を全面に押し出したアレンジの曲。 歌詞は、京が初めて書いた、前向きな詩らしい。 シンセ等のウワモノも沢山取り入れた、デジロック風味な曲調でもあり、次アルバムの「鼓動」に近いものも感じます。

総評としては、全体的に暗く重く、音も良い意味で汚い、荒れた質感を持っていて、ツボにはまれば、本当にクセになりますが、合わない人にはとことん合わない、とても危険なアルバムですね。(^^;


なお、今作から、曲作りにおいて、バンド全体でのアレンジ作業の比率が増えたらしく、作曲者名がバンド名に統一された。 なので、原曲提供者を知っている範囲で載せてみました。

01は全体を薫、サビが京
15はメロディを京、全体を薫
05はメロディが京、コード進行をDie
02、06、08は、京、Die、Toshiyaの共作
04、07、09、12、13は薫
11はDie
03、10はShinya

14は・・・全員で制作したんでしたっけ・・・?


☆お気に入り曲

Audience KILLER LOOP
蝕紅
OBSCURE

VULGAR
2005/10/21作成
2008/09/25加筆修正
★★★★★





コカコーラのようなロゴが目印の(笑)、「鬼葬」と「VULGAR」の間にリリースされたミニアルバムで、鬼葬で開花し始めた、ヘヴィロック路線を突き詰めた曲のみが収録されている。
絶大な爆発力を持つ、正しくLIVEのためのアルバム。

「特定の音楽ジャンルを徹底的に突き詰めることで、その音楽ジャンル(このアルバムなら、ミクスチャーやヘヴィネスサウンド)を、ナチュラルに吸収し、昇華することが出来る」

以上はBUCK-TICKのメンバーの発言ですが、このアルバムはDir en greyにとっては、正にその典型的な例とも言えるでしょう(薫も、VULGARリリース時のインタビューで、このアルバムを実験作と語っていましたし)。


このアルバムでは、メンバーの中でも、特にShinyaの変化を強く感じます。
ドラムンベース風なリズムを取り入れたカオスナンバーの02や、メジャーキーのパンキッシュナンバー04等、今までのShinyaの作風からは考えられないような楽曲を生み出していますし、スネアとバスドラの迫力も増し、手数と小技を重視していたような今までのスタイルから、先輩のYOSHIKIや真矢のような、破壊力のあるドラムも叩けるようになった感じです。

01では、サンプリングされた重厚なコーラス、03には、12トラック分の京のボイスが使われ、ボーカルや楽器隊の声も、まるで楽器のように使われていて、今までの彼らにはあまり無かった手法ですね(以後定番に!)。

05と06は、それぞれ、シングル「太陽の碧」のB面と、インディーズ時代のミニアルバム「MISSA」に収録されていた曲のリメイク。
05は捉え所の無い、不思議な曲調でしたが、今作ではファンクっぽいギターを駆使したヘヴィネスアレンジに。
06は、Bメロとギターソロが削除され楽曲がコンパクト化、完全にこの頃の彼らのモードに合わせた、強靭凶悪なシャウト満載ナンバーになっています。
どちらも、旧版の正統的進化ではなく、斜め上への進化とも言えるので、旧版が完全にいらない子になってしまった訳ではないですね(笑)。


LIVEで暴れるための曲達と言っても過言ではないので、このアルバム単体で聴いていると、案外早く飽きがくるかも・・?(すいません

ミニアルバムであり、激しい曲オンリーという形式上、意外と初心者へ勧めやすかったり、気分を盛り上げたい時にサラっと聴けるのはイイかも。
ただ、ドライブ中に聴くと事故りそうで怖いです(笑)。


ちなみにこのアルバム、一見歌詞が載っていないように見えますが、実は、ある場所に隠されています(このアルバム以前からファンの方なら、大体知ってるとは思いますが(^^;)。

紙ジャケの糊で貼り付けられた部分を丁寧に剥すと、ジャケットのスキマに、ジャケットより一回り小さい歌詞カードが出てきます。
注意しないとならないのは、この時に紙ジャケを破損してしまうこともありますし、剥した糊に歌詞カードがくっつき、惨劇の夜になってしまったケースもあるらしいです。(;´▽`)


☆お気に入り曲

Mr.NEWSMAN
Children
秒「」深

six Ugly
2007/02/09作成
2008/09/22加筆修正
★★★☆







鬼葬

2014/09/20作成

★★★☆

インディーズ時代からの集大成的な前作から一年半弱を経てリリースされた3rdアルバムで、サウンド的には、メンバーの語っていたバンド結成時に抱いた初期衝動を思わせる攻撃性に、様々な実験的要素、そして、MACABREリリース後に突発性難聴にかかり、吹っ切れた京による大幅な路線変更も相俟って、Dir史上でも特に混沌としたアルバムとなっています。

「鬼眼-kigan-」「ZOMBOID」「enbryo」では、猟奇を通り越した下劣でエログロな世界観の歌詩を持つ曲から始まり、それは終盤の「鴉-karasu-」と「ピンクキラー」でも見られ、本作の過激な印象を強くしています。

中盤では、変速チューニングのギターを駆使した「逆上堪能ケロイドミルク」や、無数のサンプリングボイスやノイズを重ねた「The Domestic Fucker Family」等の実験的な曲、長いアコギセッションパートがある「undecided」、アウトロのギターソロ以外、ツインギターが終始アコギ演奏に徹する「蟲-mushi-」等、ただ攻撃的なだけではない側面も見せています。

当時から非常にファン人気の高い、ヘヴィな演奏のミドルナンバー「Bottom of the death valley」と、以降のヘヴィロックへの傾倒の予兆とも言える重厚なリフが登場する「鴉-karasu-」は、近年リメイクされましたが、どちらの曲もサビを中心に別物と言ってもいいくらい変化しているので、本作を未聴の方は聴き比べてみても面白いかもしれません。

このアルバムでは浮いていると感じるくらいポップなシングル曲「JESSICA」や、残や羅刹国をある意味上回っているとも思える超過激な暴走ナンバー「ピンクキラー」を経て、ラストはピアノインスト「神葬」で終わるという、なんとも混沌とした、良くも悪くもまとまりのないアルバムです。(;´▽`)

この頃は、全員がバラバラな方向を向いてしまっていると、メンバー自身が後年語っていた通り、GAUZE、MACABREという完成度の高いアルバムを産み出した後だからこその産みの苦しみ、新たな方向性を見出した京、音楽性の変化に困惑していたShinya等、本作はバンドの歴史の中でも過渡期的な印象を感じます。
エログロな歌詩等、ビジュアル系がニガテな方にはお勧めしづらいですし、コレクターズアイテム…とまでは言いませんが、近年DIRに興味を持った方は、先にVULGAR以降のアルバムや、six Ugly等を聴いてから、本作を手にとってみる事をお勧めします。(^^;


お気に入りの曲:
Bottom of the death valley
逆上堪能ケロイドミルク
ピンクキラー







MACABRE

2014/09/16作成

★★★★☆

1stアルバムGAUZEから一年ほどでリリースされたアルバムで、前作がインディーズ時代からの積み上げで出来ているのなら、本作はインディーズ時代に目指していた音楽性を確立したとも言える、壮大な作品となっています。
コンセプト・アルバムと言ってもいいくらい、ダークかつ東洋風のジメッとした雰囲気で統一されており、約74分という長大さもあって、聴くのに体力のいるアルバムでもあります。(;´▽`)

強烈な変拍子とメロディアスなサビが組み合わさったシングル曲「脈」は、インディーズ時代からその後の世界進出後まで、Dirの王道とも言える楽曲で、物語性の強いミディアム・ナンバー「理由」「蛍火」等、前作の要素を引き継いだ楽曲もありますが、ファンクのようなリズムとエフェクティブな演奏が絡む「egnirys cimredopyh an injection」や、ミクスチャー…というよりデジロックよりで、メロディよりもリズム隊が主役な「Hydra」等、実験的な楽曲も。

シングル曲「【KR】cube」は、同じく打ち込みを組み込み、四つ打ちのダンスビートにエフェクティブな弦楽器隊の音が乗りながらも、敢えて和風な世界観の歌詩が乗ることで、和製ホラーのような不気味な世界観になっています。

アルバム中盤では、本作のハイライトであり、バンド史上でも11分弱の特に長大な「MACABRE -揚羽ノ羽ノ夢ハ蛹-」が鎮座しており、この楽曲が、アルバム全体の空気を更に重くしています。
前作のMazohyst〜と比べ、演奏にも所々に聴きどころがあり、長いながらも飽きさせない構成となっていまが、それでも長い曲が苦手な人には辛いかも。(^^;

終盤では、残-ZAN-に続くスラッシュメタルを彷彿とさせる超攻撃的ナンバー「羅刹国」、孤独や愛憎、自殺等、Dirが初期からコンセプトにしている人間の痛みを生々しく表現した「ザクロ」、そしてラストは、同じく心の痛みを表現しながらも、爽やかな曲調と、傷は綺麗な花になると歌うシングル曲「太陽の碧」で幕を閉じます。
京曰く、この太陽の碧も決して前向きな詩ではないらしいですが…。(;´▽`)


一見、アルバムのコンセプトに全く合っていないシングル曲、太陽の碧をラストに置くことで、暗く重い世界観が続き、ザクロで落ちる所まで落ちて行き、ラストの太陽の碧でほんの少し救われるという流れになっているのは本当に見事です。
シングル版と比べ、アウトロのアルペジオが長くなっていて、次第にエフェクトが掛かって拡がってゆくアレンジも、また余韻を印象深くしています。
近年のアルバムですと、DUM SPIRO SPEROも重苦しいアルバムでしたが、ラストの流転の塔が、どこか始まりや誕生を彷彿とさせる曲調でしたし、Dirはこの辺のさじ加減も上手いな、と思います。

もう古いアルバムですが、「Deity」「理由」等は今でも稀に演奏されますし、近年リメイクされた「Hydra」「MACABRE」、何度かアレンジを変えながら今も演奏され続け、DSS完全限定生産盤で新録された「羅刹国」等も収録されているので、今でも充分に聴く価値があるアルバムなので、最近のDIRを好きになった方にも是非お勧めしたいアルバムです。


余談ですが、この頃のシングルのカップリング曲は、インディーズ時代のオムニバス・アルバムに収録された「Ash」の新録版、インディーズ1stシングルのピアノ&ヴォーカルアレンジ「JEALOUS -reverse-」、後にsix Uglyでリメイクされた「children」等が収録され、タイトル曲である脈や【KR】cubeも、イントロとアウトロのアレンジが違うので、コレクター泣かせなシングル達となっています(笑)。



お気に入りの曲:

【KR】cube
MACABRE -揚羽ノ羽ノ夢ハ蛹-







GAUZE

2014/08/16作成

★★★★☆

前身であったバンドで既にそれなりの評価を得ていたのもあり、結成と同時にツアーとリリースを重ね、二年でメジャーデビュー、インディーズラストライブを日本武道館で行い、メジャーデビューシングルはYOSHIKIプロデュースの三枚同時リリース等、鳴り物入りでメジャーに殴りこみをかけた(笑)、90年代後半ビジュアル系ブームを代表するバンド、Dir en greyの記念すべきファーストアルバムですっ。

ビジュアル系のメジャー1stアルバムは、インディーズ時代の積み上げが熟したものになることが多いですが、Dirも例外ではなく、インディーズ時代から演奏されてきた楽曲達が多く、そこにYOSHIKIプロデュースのキャッチーなシングル5枚(残を除くw)がカラフルに色を付けている印象を与えます。

ヘヴィな演奏と弦楽器隊のシャウトが炸裂する「Schweinの椅子」は、チューニングを下げて近年でも稀に演奏されますし、「304号室、白死の桜」や「アクロの丘」は、物語性の強い歌詩と悲壮感が、今でもファン人気が高い名曲達ですね。(*´▽`)
シングル曲「ゆらめき」「予感」なんかは正しく90年代ビジュアル系王道のポップナンバーで、TV出演しても浮くこともありませんでした(笑)。
…しかし、初のMステ出演で、超高速ビートにシャウトや高笑いが乱舞する凶悪ナンバー「残-ZAN-」を演奏するなんて誰が予想したでしょうか(笑)。
残は2009年にリメイクされますが、この頃の良い意味でのB級ホラーチックな曲調は、現在の残とはまた違った良さがあると思うので、未聴の方も是非聴いてみてください(笑)。

変拍子とシャウト、エグい歌詩を組み合わせた攻撃的な「蜜と唾」「MASK」は、インディーズ時代から変拍子を好んでいたDirらしい楽曲で、これらの要素も現在のバンドの血肉となって受け継がれています。

キャッチーな曲もヘヴィで過激な曲も含め、このアルバム全体が、後年のビジュアル系界隈に与えた影響は計り知れず、2000年代前半には量産型ディルアングレイみたいなバンドがわんさか出てきては消えていきました。(;´▽`)
1999年にリリースされた本作は、X、LUNA SEA、黒夢等の要素を受け継いだ、90年代ビジュアル系バンドの一つの完成形というか、金字塔的なアルバムなのかな、と私は思っています。
現在のDirとは全然雰囲気が違うので、近年ファンになった方はちょっと抵抗を感じるかもしれませんが、バンドの原点であるアルバムは聴いて損はありませんし、ここはビジュアル系という偏見に巻けずに是非とも!(笑)


お気に入りの曲:
304号室、白死の桜
Cage
残 -ZAN-







MISSA

2014/09/09作成

★★★

Dir en greyの記念すべき初音源(オムニバス、デモテープ除く)で、結成から半年も経たずにリリースされたミニアルバム。

そんな背景もあり、バンドの自己紹介、もしくは名刺のような作品で、ライブで盛り上がりそうな楽曲が6曲、収録されています。
…これだけだとアレなので(笑)もう少し掘り下げると、「霧と繭」は、猟奇的な歌詩のため規制された「惨劇の夜」が原曲ですが、リリースはこちらが先で、惨劇の夜はインディーズ時代のビデオクリップでしか聴くことが出来ないという、地味にレア音源になっています。
「「S」」は、シンプルなギターリフと四つ打ちに、京のシャウト混じりの歌唱が乗る曲ですが、シャウトも演奏もどこか不安定で、全体的に荒削りな本作でも特に粗いかも。(^^;

「Erode」は、Toshiya作曲らしくベースラインが流麗な曲ですが、ちょっと埋もれ気味ですね。(;´▽`)
「蒼い月」はインディーズ時代のライブでは欠かせなかった暴れ曲で、サビを何十回も繰り返すのが定番となっていて、最長演奏記録は40分だったという話を聞いたことがあります(噂ですがw;)。

「GARDEN」もインディーズ〜メジャー初期で頻繁に演奏された楽曲で、90年代ビジュアル系王道のポップナンバーなので、この楽曲は今でも好き、という方も多いのではないでしょうか。
曲調的に、今のDIRでは演らなさそうなのがもどかしいですが。(^^;
「秒「」深」も、インディーズからメジャー初期まで演奏され続けた楽曲で、GARDENがビジュアル系王道なら、こちらはインディーズビジュアル系王道とも言える、ヘドバン必至のヘヴィナンバーです。
MACABREツアーの途中でメロディと歌詩、一部演奏がアレンジされ(未音源化)、2002年の「six Ugly」でチューニングを下げた演奏と英歌詩で別物と言える程にリメイクされましたが、2013年のFC限定ライブでは初期アレンジで演奏されたりもしました。


時代的なものや、結成後すぐのリリースだったのもあり、演奏や音質は荒削りで、現在と全く音楽性が違うので、コレクターズアイテムになってしまっているところもありますが、現在でも稀に演奏されたり、霧と繭のように近年リメイクされたりもするので、このバンドにのめり込んでいる人なら、確保しておいても損はないかと思います。
ベスト盤にも全曲未収録ですしね。(^^;


お気に入りの曲:
蒼い月
GARDEN
秒「」深





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